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呼吸器感染症ー日常生活管理を中心にー

(岐阜大学主催市民公開講座の講演内容です)


1.はじめに

 「風邪をこじらせて肺炎になる」とよくいわれる。風邪は約80%がウイルス感染で感冒症候群と呼ばれる。ウイルスに特効薬はないが、健康な人は3日から7日で良くなる。これは様々の感染防御機構があって、ある特定のウイルスが体内に侵入すると、まず白血球が動員されウイルスと戦い、その間に抗体といってそのウイルスを殺す蛋白質が作られる。こうしてウイルスと抗体が戦い、抗体が勝つと風邪はよくなる。しかし、ウイルスと白血球や抗体が戦っている間に体力が消耗すると、その間に他の細菌に感染し、弱った体の中で急速に悪化する。これが「風邪をこじらせて肺炎になる」わけで、呼吸器二次感染と呼ばれる。今回は、まず呼吸器感染症における感染防御機構について説明し、次いで今話題の呼吸器感染症について簡単に述べ、最後に日常生活の中で呼吸器感染をいかに防いで健康な体を管理していくかを解説したい。

2.呼吸器の感染防御機構

感染防御機構には他の臓器の感染症と共通する、全身の感染防御と、呼吸器に特有の感染防御があって、後者を局所感染防御機構と言う。気道(呼吸時の空気の通り道)には粘膜という壁で覆われ、ここから粘液が分泌され、気道に侵入した細菌や異物を捕え、粘膜の表面一面に生えた線毛という毛によって痰

として体外に咳とともに排出される。健康人でも一日100ml程度の粘液が分泌されているが、気道に感染が生じると粘液分泌は倍以上に増えて、ウイルスや細菌を咳痰として体外へ排出している。風邪をきくと咳、痰がでるのもこのためである。通常粘液は透明だが、細菌が粘液中の白血球と戦い死ぬと、白や黄色の色の付いた痰(細菌の種類によって異なる)になる。痰に色が付くのは気道に感染があるという表われなのである。

3.話題の呼吸器感染症

1)マイコプラズマ肺炎

 オリンピックの年に流行するが、最近はオリンピックの年の前後でもよくみかける。症状は風邪とよく似ているが、咳がひどいこと、なかなか治癒しないことが異なり、胸部レントゲンで特徴的な異型肺炎の像を示す。早目に専門医を受診し、レントゲンや血液検査を受けることが必要である。エリスロマイシンやミノマイシンが良く効き、最近はクラリスロマイシン,アジスロマイシン等より強力な薬も開発された。 

2)クラミジア肺炎

 かつては,オウム病といってインコやオウム、ハト等を介して人に感染するものが有名であった。飼っていた鳥が死んだり、元気がなくなった後に呼吸器症状が出現したら要注意。マイコプラズマ肺炎と同様の抗生剤がよく効く。

 最近,オウム病よりも,むしろ人から人へ感染するクラミジア肺炎が多きいことがわかってきた。子供から老人まで様々の年代で感染する.マイコプラズマ肺炎と同様の抗生剤がよく効く。

3)レジオネラ肺炎

在郷軍人病ともいわれ、ビルの冷房用貯水槽などで繁殖したレジオネラ属による肺炎。日本では殆どみられなかったが、最近は古い温泉宿で長湯をして疲れたところへ、冷房をかけ過ぎて感染する場合があり注意したい。近年,24時間風呂や新生児室保育器の感染で問題になった。急性肺炎の症状とともに精神症状を伴うことがある。

4)ニューモシスティス・カリニ肺炎

 エイズの末期状態で死亡の原因となることが多く有名になったが、エイズに限らず、白血病や、抗癌剤、免疫抑制剤の投与を受けている人に発症する。一般的に健康な人にはまず感染することはない。

5)肺結核

  肺結核の項を参照

6)副鼻腔気管支症候群

 人は,呼吸をするとき,鼻から息を吸う。副鼻腔気管支症候群は,副鼻腔炎(蓄膿症)が慢性的に存在すると,眠っている間に,鼻から気管支に細菌が吸入気や鼻の分泌物とともに流入し,気管支も慢性的に炎症を起こし,気管支炎になる。副鼻腔炎がよくならないと,気管支炎も治らないため,いつまでも咳,痰が続く。

4.日常生活における呼吸器感染の予防と治療

1)うがいの励行

 うがいをすることにより、口腔や咽頭に付着した細菌が外へ排出される。ですからうがい液は飲み込まず、吐き出す(抗真菌薬でうがいをする場合は、何回か吐き出した後、最後の一口は飲み込む。これは消化器真菌感染にも効果があるから)。消毒薬(イソジン含嗽薬)は薬局で買え、殺菌効果のある消毒薬でうがいをするのがよい。学校や仕事から帰った後、外出した後、寝る前、朝出かける前等こまめに行なうことが必要である。

2)マスクの着用

 呼吸器感染症の感染経路は飛沫感染なので、これを防ぐはマスクを着用する。マスクは市販のものに木綿のガーゼを折り畳んでマスクと口の間に挟んだほうがより効果がある。

3)規則正しい生活

 体力が弱っていると、感染防御機構が十分に働かないので、規則正しい生活をして体調をととのえる必要がある。過労、夜ふかし、お酒の飲み過ぎ、喫煙は感染に対する抵抗力を弱くする。食事も大切で、偏った食生活はよくない。抗体は蛋白質であり、十分な蛋白質の摂取が必要で、感染の場には炎症が生じ、体力が消耗するため適度な糖質や脂質の摂取も必要である。またビタミン類も重要な役割を果たしており、野菜や果物もバランスよく摂取すること。


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